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エプスタイン事件の考察 中編

初めにお読みください。

 本記事では、ケルト文化について悪いイメージを与える記述がありますが、その全てを否定する意図はありません。

 ケルト文化には素晴らしい音楽なども伝えられており、評価すべき点が多々あると思っています。

 古代ケルトの宗教には人身御供があったことなども記述しますが、それは大なり小なり世界中の古代社会で行われていたことであり、ケルトだけに限ったことではありません。

 この点において、古代ケルト民族が「別格的に悪だった」と主張したいわけでもないのでご了承ください。

   

 また、本記事には部分的・間接的に猟奇的な内容が含まれているため、そちらの方面の精神的耐性に自信がない方は読むのをお止めください。

3章 ケルト十字

ケルト十字

画像引用 Wikipedia

太陽十字と車輪型ペンダント

画像引用 Wikipedia

  政治的シンボルとして使われるケルト十字

 

●画像引用 Wikipedia

エプスタイン島の十字路の拡大画像

画像引用 Apple Map

 エプスタイン島の十字路広場を調べるに当たり、参考画像を用意しました。

 それが左の図ですが、これは『ケルト十字』と呼ばれるシンボルであり、十字の中心が円環によって囲われているのが特徴です。

 

 ケルト人〈注4〉について先に説明しておくと、この民族は中央アジアの草原から馬や車輪付きの馬車・戦車に乗り、ヨーロッパに到来したインド・ヨーロッパ語族ケルト語派〈注5〉に属する人々です。

 古代ローマ人からは概して『ガリア人』と呼ばれていました。

 ケルト人についての他民族側の記録としては、古代ローマの英雄『ユリウス・カエサル(英語読み:ジュリス・シーザー)〈注6〉』の著作である『ガリア戦記〈注7〉』があり、彼らの社会を知る上での資料となっています。

 

 さて、ケルト十字は初期ケルト文化とキリスト教の融合を示す象徴の1つといわれてますが、十字と円環を組み合わせた表現は広く見られ、キリスト教以前にも存在しました。

 それが左の図にある『太陽十字』です。

 太陽十字は、ヨーロッパの新石器時代から青銅器時代にしばしば見られるという太陽のシンボルと解釈されています。

 紀元前2000年代のものといわれる太陽十字が施された車輪型ペンダントが発見されていることから、ひょっとしらこのシンボルはケルト文化より起源が古い可能性があります。

 とはいえ、この意匠がケルト文化と深い繋がりがあることは間違いないでしょう。

 

 古代ローマに征服され、続いてキリスト教の支配下に入り、歴史の闇に埋もれてしまったと思われたケルト文化ですが、ケルト人の象徴は思わぬところで使用されることになりました。

 白人優越主義〈注8〉やネオ・ファシズム〈注9〉のグループのいくつかが、ケルト十字を象徴として使ってたのです。

 それが左の図の政治的な意図で採用されたケルト十字です。

 

 おや、どこで見たような…………?

 

 この図を見た後、その下にあるエプスタイン島の十字路広場に目を凝らしてください。

 

 何かに非常によく似ていませんか?

 

 (思考中)……………………………………………………………………………

………………そうです。

 エプスタイン島にある十字路は、どうにもこうにもケルト十字との関係を臭わせるのです。

 

 そもそも十字路自体、昔から魔術に所縁が深い象徴です。
 有名な魔術書『ソロモンの鍵〈注10〉』によると、十字路は静かに更けた真夜中で魔術を行うのには最適の場所とされていたそうです。
 また古代多神教における地母神の儀式では、生まれたばかりの子供を古代の母神に捧げる習慣があり、イギリスの修道士アルフリックという人物は「女たちが十字路に行って、子供を地上に寝かせて悪魔に捧げている」という発言を残しているとか。

 ギリシア神話の豊穣神にして冥界神であるヘカテー〈注11〉は、十字路や三差路で現れるとされ、そうした地母神の典型だと思われます。

 

 こうした点を考えると、ケルトと魔術――この2つの要素がエプスタイン島にある十字路広場と深い関係がありそうな気がします。

 では、次はそれについて掘り下げていきましょう。


4章 ケルトの末裔

イルミナティの離脱者を自称するジョン・トッド

●画像引用 henrymakow.com

Druids(ドルイド)

 ドルイドは、ケルト人社会における祭司です。

 宗教的指導の他、政治や裁判など彼らの担った役割・影響は多大でした。

 古代社会ではさして珍しいことではないかもしれませんが、その儀式では人身御供が行われていました。

Rosicrucians(薔薇十字団)

 薔薇十字団は中世から存在するといわれた秘密結社であり、 フリーメイソンに属しているという噂もあります。

 錬金術師やカバラ学者が、各地を旅行したり知識の交換をしたりする必要から作ったギルドのような組織の1つだとも言われているそうです。

 エプスタインの人脈は、陰謀論で有名な秘密結社『イルミナティ〈注12〉』に関連しているといわれています。

 英国王室のアンドルー王子やクリントン夫妻をはじめ、エプスタイン島に招待された人物は、エスタブリッシュメント(支配階級)や、社会的地位・名声を持った人物が非常に多いです。

 陰謀論者的に見るなら、彼らの中にイルミナティ関係者がいるというのは当然の認識でしょう。

 

 そこでイルミナティとケルトとの関係について探ってみましょう。

 

 イルミナティの支配層は『13血流〈注13〉』と呼ばれる13の家系によって構成されているそうです。

 そのうちの1つ――コリンズ家〈注14〉の出身である『ジョン・トッド(John Todd)/別名:クリストファー・コリンズ(Cristopher Kollyns)』という人物が、1970年代にイルミナティを離脱し、その内情を暴露しました――というか、真偽不明ながらもそういう興味深い話があるのです。

 

 彼によると、イルミナティは13名の魔術師たちで構成される『グランド・ドルイド評議会』によって管理されており、組織に所属するオカルティスト(魔術師)たちは、ハロウィン〈注15〉を含めて年8回集まり、サバト〈注16〉の儀式を実践するとか。

 この儀式では乱交はもちろん、時には人間が生贄に捧げられるそうです。 

 これだけでもエプスタイン島で行われていたという儀式を連想してしまいますが、もう少し話を詰めてみましょう。

 

 サバトと言えば悪魔崇拝の集会として知られていますが、元はケルトの祝祭です。

 ケルトでは、1年を8つの期間に分け、その節目で祝祭を行っていたようです。

 つまりジョン・トッドが発言したイルミナティの集会の数と同じであり、彼らはケルトのドルイド魔術〈注17〉を実践していたことになります。

 

 ジョン・トッド曰く、 イルミナティにとってユダヤ人はフロントであり、人々の注意を逸らすための存在とのことです。

 イルミナティは、創設者の出自こそユダヤだったものの、ユダヤ教〈注18〉を信仰していたわけではなかったようです。

 メンバーの大半はユダヤ人ではなく、ロスチャイルド家を例外として、指導者の大半もスコットランド系またはフランス系のゲール族〈注19〉——つまりユダヤ人との繋がりは極めて希薄なのです。

 ジョン・トッドの一族の他、ほとんどのイルミナティ・メンバーもドルイドを尊重し、先祖はローマ、ギリシア、イングランドの異教に属する神官。この他、先祖がエジプトやバビロニアまで辿れる一族もいたようです。

 つまりイルミナティの頂点に君臨しているのは、ユダヤ教サバタイ派〈注20〉でカバリスト〈注21〉の家系であるロスチャイルド家ですが、そのすぐ下にいるグランドドルイド評議会の構成員は、ケルト宗教の祭司=ドルイドの集団だというのです。

 

 こうしたジョン・トッドの発言を裏付けるように、イルミナティカードには『Druids(ドルイド)』というカードがあります。

 またこの他にも『Rosicrucians(薔薇十字団)』というカードがあります。

 これもまたケルト十字にそっくりですが、そもそも薔薇十字団という秘密結社とは、ケルトなどの異教(非キリスト教的宗教)の教義を覆う隠れ蓑だったのではないかと思われるのです。

 

 イルミナティはユダヤ財閥が主導する組織であり、故にそのオカルト要素の中心はユダヤ教神秘主義であるカバラである――このように考えていた方も少なくないでしょう。

  でも、蓋を開けてみれば、古代ヨーロッパに広まっていたケルト人の宗教も大きく関わっていた可能性が大きいのです。

 となれば、キリスト教徒たちにいわれるまでもなく、その組織は必然的にアンチ・キリストの色が強くなることでしょう。

 何故なら原ヨーロッパの宗教にとって、キリスト教は『侵略者』となるのですから。


【3章注釈 4~11】

■注4 ケルト人

 中央アジアからヨーロッパに渡来した民族。

 現在、ケルトという言葉は、言語・文化の区分を示すための近現代になってから作られた用語であり、古代から中世において右図で表されている地域の住民が「ケルト人」として一体的な民族意識を持っていたとは考えられていない。

 ユリウス・カエサル著のガリア戦記においても、ケルト人(ガリア人)の諸部族同士で争っていたことが記されている。

 ケルト人は大別して『大陸のケルト』と『島のケルト』があるといわれている。

 『大陸のケルト』は背銅器時代に中部ヨーロッパに広がり、『島のケルト』は時期は不明瞭ながらブリテン諸島に渡来したケルト人である。

 『島のケルト』がもたらしたケルト神話は、後のアーサー王伝説に影響した可能性が高い。

 

■注5 インド・ヨーロッパ語族ケルト語派

  インド・ヨーロッパ語族は、ヨーロッパから南アジア、北アジア、アフリカ、南アメリカ、北アメリカ、オセアニアにかけて話者地域が広がる語族である。印欧語族(いんおうごぞく)と略称される。

 この語族に属する言語を公用語としている国は100を超え、英語などのヨーロッパから生まれた言語やインドのサンスクリット語などもこれに属する。

 世界の主要な宗教においても、キリスト教・仏教・ヒンドゥー教はインド・ヨーロッパ語族に属する言語を使用している一方で、過去の国家の滅亡などで死語になってしまった言語もある。

 その祖先の出身はロシア南部にあるという『クルガン仮説』と小アジア(アナトリア)にあるという『アナトリア仮説』があり、現在は『クルガン仮説』が優勢である。

 

 インド・ヨーロッパ語族に属するケルト語派には、アイルランド語、ウェールズ語、ブルトン語、スコットランド・ゲール語、コーンウォール語、マン島語がある。

 元々は古代ヨーロッパで広く栄えていたケルト人にとって話されていたが、ローマ人やゲルマン人に追われ、現在ではアイルランド、イギリス、フランスの一部地区に残る少数言語となっている。

 

■注6 ユリウス・カエサル(紀元前100年~紀元前44年3月15日)

 フルネームは『ガイウス・ユリウス・カエサル(古典ラテン語:Gaius Iulius Caesar)』であり、共和制ローマの政治家・軍人にして文筆家。

 彼の著作であるガリア遠征の記録『ガリア戦記』とローマ内戦の記録『内乱記』は、当時の状況を知る歴史的資料となっている。

 カエサルは混迷・混乱のさなかにあった共和制の末期にあって数々の外敵や政敵を倒し独裁者となった。

 また、カエサルは古代ユダヤ人とも少なからず関わりがあったという。

 数多の英雄に漏れず、カエサルもまた数々の戦争を引き起こした殺戮者であったが、その一方でクレメンティア (ラテン語:Clementia / 寛容)の精神を掲げ、敗北した敵対者たちを許してきた。

 だが、その精神は災いとなって返り、カエサルは、自身が許し解放した者たちによって暗殺されることになった。

 

■注7 ガリア戦記

 ユリウス・カエサルが書き記したガリア遠征の記録。

 第1巻~第8巻まであるが、第7巻までがカエサルの著作であり、第8巻はカエサルの配下だったアウルス・ヒルティウスの著作である。

 当時のケルト人社会を知る上での貴重な資料だが、古代の文明国家だったローマとまだ原始的な雰囲気を残していたケルト社会との激突という視点でも興味深い内容となっている。

 

■注8 白人優越主義

 一般的には『白人至上主義』という言葉で知られている人種差別的思想の1つである。

 スローガンとして『ホワイト・パワー』『ホワイトプライド』という言葉が頻繁に用いられる。

 定義としては『白人』や『コーカソイド』が他人種よりも優れているというという主張である。

 この思想を掲げる団体としては、クー・クラックス・クラン (KKK)、アメリカ・ナチ党などが知られている。

 

■注9 ネオ・ファシズム

 ネオ・ファシズムは、ファシズムの要素を大きく含む第二次世界大戦後のイデオロギーのことである。

 またネオ・ファシストは、ベニート・ムッソリーニやイタリアのファシスト、またはその他のファシストの指導者や国家への敬愛を表明する人物や集団への呼称である。

 ネオ・ファシズムは通常ナショナリズムや反移民主義または先住民保護、反共主義、反自由民主主義などの主張を含む。しかし具体的にどの集団や範囲をネオ・ファシストと呼ぶかは議論が多く、蔑称として使われる場合も多い。

 ネオ・ファシストの運動はより明確に右翼であり、急進主義的右翼と関連するようになったが、その影響からか愛国的思想そのものがファシズムと関連付けられるようになる場合もある。

 

■注10 ソロモンの鍵

 ヨーロッパの古典的魔法書(グリモワール)。

 古代イスラエルの王にして魔術師の伝承があるソロモン王の著作とされるが、実際の作者は不明で14世紀から15世紀のイタリア・ルネサンスに起源をもつとされる。

 一般的には『ソロモンの大いなる鍵』と『ソロモンの小さな鍵(レメゲトン)』の2つに分類され、前者の特徴としては豊富な図版と大量なペンタクル(魔術用の護符)の付録を含んでいることであり、後者の特徴は悪魔の喚起と使役について記した書物『ゴエティア』を含んでいることである。

 

■注11 ヘカテー(古代ギリシャ語: Ἑκάτη, Hekátē)

 ヘカテーはギリシア神話の女神である。
 『死の女神』、『女魔術師の保護者』、『霊の先導者』、『ラミアーの母』、『死者達の王女』、『無敵の女王』等の別名で呼ばれたが、『ソーテイラー(救世主)』の称号でも呼ばれることもあった。

 古代ローマにおいては『トリウィア(Trivia、「十字路の」の意)』という形容語を付けて呼ろくばれたように十字路との関係が深い。
 後代のヘカテーは、3つの体を持ち、亡霊の女王として地獄の犬を連れた恐ろしい女神とされ、夜の十字路や三叉路に現れると考えられるようになった。

 十字路や三叉路のような交差点は神々や精霊が訪れる特殊な場所だと考えられ、古代人は交差点で集会を開き神々を傍聴人としたという。

【4章注釈 12~21】

■注12 イルミナティ

 歴史上のイルミナティは、18世紀後半に一時期存在し、南ドイツとオーストリアに広まったバイエルン啓明結社(バヴァリア啓明結社)と称されるフリーメイソンリー的秘密結社である。

 1776年にバイエルン選帝侯領のインゴルシュタット(地名)で創設された。

 当初は大学教授アダム・ヴァイスハウプトと学生の私的サークルに過ぎなかったが、その時代の社会体制に反するイデオロギーを持っていたため、体制側から迫害されて1785年に解散を余儀なくされ、活動期間は短かったとされている。

 ただし、その解散後にまもなくフランス革命が勃発した際には、反フリーメイソン論者によってフランス革命の黒幕と指摘された。

 イルミナティは表向き解散したように見えて、地下において政治活動を行っていたと主張はこの時代から唱えられていたようだ。 

 この時代の世相を考えると、当時のイルミナティは王侯やキリスト教会の権力に反発する政治組織という面が強いのかもしれない。

 

■注13 イルミナティの13血流

 陰謀論で囁かれるイルミナティの支配層である。

 イルミナティは13の名家に支配されているといわれ、支配者たちの起源は古代または大洪水以前の『超古代』まで遡るという。

 これはアダム・ヴァイスハウプトが創設した歴史的な意味でのイルミナティと矛盾するが、前者の場合はその関連組織といわれる『フリーメイソン』との繋がりが深いと思われる。

 『イルミナティ 悪魔の13血流』の著者であるフリッツ・スプリングマイヤーによると、13家は以下の通りである。

 

 ①アスター家、②バンディ家、③コリンズ家、④デュボン家、⑤フリーマン家、⑥ケネディ家、

 ⑦李家、⑧オナシス家、⑨ロックフェラー家、⑩ロスチャイルド家、⑪ラッセル家、⑫ファン・ダイン家

 ⑬第13番目の聖なるダビデの血流

 ⇒小説やゲームの設定のようにも見えるこの13家だが、現実に力を持った家系が多いのは事実である。

 

■注14 コリンズ家

 13家の1つ。

 フリッツ・スプリングマイヤーによると、コリンズ家は13家の中でも特に魔術と所縁が深い家系らしい。

 スプリングマイヤーやジョン・トッドなどの話を総括して考えると、古代ヨーロッパにおける異教の伝統を最も受け継いできたのがコリンズ家なのかもしれない。

 

■注15 ハロウィン

 古代ケルト人が起源と考えられている祭りのこと。

 ハロウィンの原型となったケルトの祭りは『サウィン』と呼ばれ、もともとは動物の生贄などを捧げる宗教的な行事であったが、現代ではアメリカ合衆国などの民間行事として定着し、祝祭本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなっている。

 ケルト歴での年末(10月31日)を祝う祭りであり、この日には死者の領域、異界との境界が開くとされるので、日本で言うところの『お盆』と同じ意味合いもあるが、悪しき妖精や邪悪な魔女もやってくるので、その魔除けとしてドルイドから分けられた火を持ち帰るという。

 つまり元々のハロウィン(サウィン)には、収穫祭と大晦日とお盆と節分(鬼払い)という要素があった。

 陰謀論者の中には、ハロウィンは悪魔崇拝の儀式と同じだからと忌避すべきと主張する者たちもいる。

 

■注16 サバト

 サバトとはヨーロッパで信じられていた魔女あるいは悪魔崇拝の集会である。

 サバトを主宰するのは悪魔とされ、サバトを執り行う悪魔としては『バフォメット』や『レオナール』が挙げられている。

 その起源としては、キリスト教が浸透する以前の古代ヨーロッパの宗教の影響が濃いといわれている。

 ヨーロッパでは、土曜の夜に魔女が集会を行うと信じられており、中世から17世紀ごろまでサバトに参加した罪を告発されて裁判にかけられたという無数の人々の記録が残っているものの、その真偽・情報の信頼性については定かではない。  

 中世ヨーロッパの各地では、女たちが夜間にディアーナやゲルマンの女神ホルダと飛行し集うといった異教的民間信仰があった。

 カノン法(教会法)によると、夜に動物に乗ってディアーナとともに旅をする『邪悪な女たち』がいるという迷信を根絶すべきだと非難している。

 その頃は、悪魔に仕える魔女という存在の概念はまだ確立していなかったが、ここにみられる女たちの夜の旅や集会は、魔女がホウキや動物にまたがって夜に集うという後世に作られた類型的サバト像に通じるものがある。

 近現代において復興し、再構築されたネオペイガニズム(新異教主義)やウイッカでは、祝日・儀式の名称として『サバト』が自覚的に用いられている。

 

■注17 ドルイド

 ドルイドは、ケルト人社会における祭司のこと。
 宗教・政治・裁判など、およそケルト社会における知的分野の中心的存在だった。 

 その宗教上の特徴としては、森や木々との関連が深く、ドルイドが四葉のクローバーなどの希少な植物を崇拝していたことが伝えられている。

 また『ガリア戦記』や『地理誌ストラボン著)』など古代ローマ人側の記録では、ドルイド主導で人身供儀が行われたことと記されている。

 

■注18 ユダヤ教

 古代の中近東で始まった唯一神ヤハウェを崇拝するユダヤ人の民族宗教。

 選民思想や救世主信仰などを特徴とする。

 この宗教からキリスト教やイスラム教などの世界宗教が派生した。

 一般的にヤハウェのみを崇拝する唯一神教と思われる傾向にあるが、古代イスラエル時代は絶対的な神ではなく、多神教の世界観を認めた上でヤハウェのみを崇拝する拝一神教だったという。

 

■注19 ゲール族(ゲール人)

 ゲール人は北西ヨーロッパの先住したケルト系民族である。ケルト語派に属すゲール語を話す。

 ゲール人の子孫として現在のアイルランド人やスコットランド人を含むが、これらの国民を指す範囲はより複雑となっている。

 

■20 サバタイ派(シャブタイ派)

 サバタイ派は、救世主を自称したシャブタイ・ツヴィ(サバタイ・ツヴィ:1626年7月1日-1676年9月17日)を中心に17世紀の半ばに誕生した、メシアニズム(救世主待望論)を信奉するユダヤ教の党派の名称である。

 その教義の根底には急進的なカバラ思想が据えられていたため、ユダヤ教の正統派からは異端とみなされていた。

 ただし現在のユダヤ教がサバタイ派の影響を少なからず受けていることは事実である。

 

■注21 カバリスト

 カバリストはユダヤ教の神秘主義思想であるカバラを身に付けた者のこと。

 カバラには、大きくユダヤ・カバラとクリスチャン・カバラに分類される。

 前者が本来のカバラであり、ユダヤ教徒が旧約聖書の解釈に用いるものである。

 後者はユダヤ・カバラをキリスト教に応用するために考えられたが、後に近代西洋魔術の理論的根拠にされた。

 クリスチャン・カバラは、魔術的シンボルとも言える『生命の樹』の活用を中心に成り立っている。

参考・引用

■参考文献
●ケルト文化事典 松村賢一・木村正俊 編
●イルミナティ 悪魔の13血流 フリッツ・スプリングマイヤー 著 KKベストセラーズ

●カナンの呪い ユースタス・マリンズ 著(天童竺丸 訳) 成甲書房

●ガリア戦記 ガイウス・ユリウス・カエサル 著(近山近次 訳) 岩波書店

●ローマ人の物語4(ユリウス・カエサル―ルビコン以前―) 塩野七生 著 新潮社 

●魔女狩りとMacbeth 大上治子 著 ※論文
●The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983) Barbara G. Walker 著
●史上最大の秘密結社フリーメーソン 鬼塚五十一 著 ムー・スーパー・ミステリー・ブックス

 

■参考サイト

●Wikipedia
●henrymakow.com
●aozoraホームページ
●さてはてメモ帳
●そらのともしび(古代ケルトの1年の祝祭(サバト)、太陰暦と樹木歴)
●日々徒然スピ日記
●ADAMANTINE
●グンデストルップの大釜
●神魔精妖名辞典
●クレタ文明とケルト人そして日本とのつながり
●サンチュウ事報(SANCHUSHIHO)
●LUCIFERIAN MAGICK / ルシファー魔術
●michael-1001のブログ

●5ちゃんねる

●Twitter