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ヴォイニッチ手稿の考察 その1 ヴォイニッチ手稿とケルト

ヴォイニッチ手稿の発見

ウィルフリッド・ヴォイニッチ

●画像引用 Wikipedia

アタナシウス・キルヒャー

●画像引用 Wikipedia

 皆さんは『ヴォイニッチ手稿』という古文書をご存じでしょうか。

 『ヴォイニッチ写本』ともいわれるこの書物は、不思議な植物などの絵と未解読の文字に満ちた謎の書物として知られています。

 この書物の名称は、発見者であるポーランド系アメリカ人――ウィルフリッド・ヴォイニッチに因みます。

 

 ウィルフリッド・ヴォイニッチは、ポーランド系アメリカ人の革命家で古書収集家でもであり、1912年にイタリアで同書を発見したそうです。

 ヴォイニッチ手稿には、タイトルや著者名などの記述はなく、手稿の執筆時期も不明です。

 書物の寸法は23.5cm × 16.2cm × 5cm、現存する分では約240ページの羊皮紙でできています。

 書物に書かれた言語は、多くの歴史研究者や言語学者などが解読を試みましたが、現在まで解明には至っていません。

 2011年にアリゾナ大学で行われた放射性炭素年代測定により、手稿に使用されている羊皮紙は1404年~1438年頃に造られたとされ、執筆時期はさらに後年という可能性があるとか。

 確実にわかっているこの書物の最初の所有者は、プラハ錬金術師ゲオルグ・バレシュ〈注1〉といわれています。

 

 バレシュは、現在が学者たちと同じようにヴォイニッチ手稿の謎に頭を抱えました。

 彼は解読の手掛かりを求め、イエズス会の司祭にして学者でもあるアタナシウス・キルヒャー〈注2〉にヴォイニッチ手稿のサンプル写本を送りました。

 当時、キルヒャーはコプト語(4世紀以降のエジプト語)の辞書を公開し、エジプトの象形文字を解読した(と思われていた)人物として知られていたので、このような人物なら手稿解読のヒントが得られるかもしれないと思ったのでしょう。

 1639年にバレシュがキルヒャーに宛てた手紙は、ヴォイニッチ手稿について残されている(今のところ)最古の記録となっています。

 送った手紙の内容から、ヴォイニッチ手稿が古代エジプトの植物に関する科学書ではないかという見解をバレシュが抱いていたことが推察されています。

 故に当時、エジプト言語の権威だったキルヒャーに質問したのでしょうが、キルヒャーにしてみれば、いきなりわけのわからない本についての意見を求められ、さぞかし困惑したことでしょう。

 バレシュは1637年と1639年にキルヒャーへ手紙を送りましたが、結局返事はなかったようです。

 とはいえ、近世ヨーロッパの人物がヴォイニッチ手稿についてどう考えていたかを知る上で、彼の手紙は貴重な資料になっています。

 

 ヴォイニッチ手稿の持ち主の遍歴については、他サイト・ブログなどですでに既出なので、そのご紹介は後回しにし、早速内容の考察に入っていきたいと思います。

 

 ヴォイニッチ手稿はこのブログの主要テーマの1つであり、不定期更新ながらも長く取り扱うことになるでしょう。

 ご興味がある方はこの先にお進みください。


【注釈 1~2】

 

■1 ゲオルグ・バレシュ

 ゲオルグ・バレシュはプラハの錬金術師であり、骨董品の収集家。

 ヴォイニッチ手稿との繋がりで知られている。

 クレメンティヌムのイエズス会の大学で学び、1602年に学士号を取得した。

 

■2 アタナシウス・キルヒャー(1601年5月2日 ~1680年11月27日)

 アタナシウス・キルヒャーは、17世紀のドイツ出身の学者、イエズス会司祭。東洋研究、地質学、医学など幅広い分野で優れた業績を残した。

 ヒエログリフの科学的研究と読解に取り組んだパイオニアとしても有名。

 アタナシウスは当時のヨーロッパでもっとも優れた古代エジプト研究者であった。

 彼の提示した説の中には誤っていたものもあるが、それを差し引いても学術的エジプト研究のパイオニアという地位は揺るがない。

 1633年になってコプト語を学ぶと、初のコプト語の文法書『プロドロムス・コプトゥス・シヴェ・エジプティアクス』を1636年に出版した。

 アタナシウスは古代エジプト語が最初の人間『アダム』によって使われていた言葉であり、伝説の錬金術師ヘルメス・トリスメギストスモーセと同一人物であると推測している。

 そしてヒエログリフは文字ではなくオカルト的な記号であると結論づけたが、このような間違った見解からアタナシウスの『翻訳』はちんぷんかんぷんなものとなった。

 結果的には、アタナシウスのヒエログリフ解読の試みは失敗に終わったが、科学的ヒエログリフ解読の嚆矢にはなった。
 アタナシウスの収集した膨大なヒエログリフ関係の資料は後にジャン=フランソワ・シャンポリオンの手にわたり、ヒエログリフの解読成功に貢献している。
 アタナシウス自身も、後にヒエログリフはなんらかのアルファベットであるという結論に達し、(見当違いではあったが)具体的にギリシア語のアルファベットとヒエログリフを対応させてみている。
 ただし、今日における彼の評価は、ヒエログリフ解読を絵文字の一種という間違った認識で方向付けたため、イェール大学のマイケル・コウが言うように『解読を2世紀遅らせた人物』というものが多い。

ヴォイニッチ手稿とイルミナティとケルトの繋がり

ヴォイニッチ手稿 ページ33r

 ヴァイニッチ手稿に描かれた上記の植物は、赤枠部分の人間の頭部(に見えるもの)に根を下ろし、その養分を吸い取っているように見えます。

 このような絵があるため、ブログ主としては学者たちの説より「ヴォイニッチ手稿の世界では、植物が生物界の頂点に君臨し、人間を餌にしている」という類の話を主張する『ネット掲示板の説』の方に信憑性を感じました。

 識者たちの中には、ヴォイニッチ手稿が『医学書』や『生活に関する参考書』などの説を述べる人もいますが、このような不気味な植物があることは無視しているのでしょうか。

 

●画像引用 ヴォイニッチ手稿

Druids(ドルイド)

 ドルイドは、ケルト人社会における祭司です。

 宗教的指導の他、政治や裁判など彼らの担った役割・影響は多大でした。

 古代社会ではさして珍しいことではないかもしれませんが、その儀式では人身御供が行われていました。

 イルミナティやヴォイニッチ手稿の秘密を少しだけ語ったバーバリアン・イルミナティの統治評議会メンバーも、現代におけるドルイドの1人なのでしょうか。

 なお、上記の画像にある通りドルイドはイルミナティカードの1つにされています。

 

●画像引用 STEVE JACKSON GAMES

アーサー王

 アーサー王に纏わる伝説の中にイルミナティとヴォイニッチ手稿の秘密が隠されているのでしょうか。

 アーサー王伝説の典型と言えば、『聖杯伝説』がありますが…………。

 

●画像引用 Wikipedia

 ヴォイニッチ手稿の解読に成功したという作家や学者たちは、これについて『婦人の健康に関する医学書』、『ドミニコ会の修道女がアラゴン王国女王であるマリアのために俗ラテン語で記述した生活に関する参考書』などの説を唱えています。

 ただ、ヴォイニッチ手稿を「読める」と主張した者たちは、上記のような識者たちだけではありません。

 

 ネット掲示板『2ちゃんねる(現5ちゃんねる)』には匿名で自称『霊能者』的な人物、あるいは『異世界を体験した』的な人物が複数現れ、ヴォイニッチ手稿について数々のコメントを残していきました。

  こうしたネット掲示板の人たちの主張で概ね共通している見解は、ヴォイニッチ手稿に描かれた植物の『生物として優位性』です。

 

 彼ら曰く、ヴォイニッチ手稿には我々が住む世界とは異なる世界——いわゆる『異世界』のことが描かれており、その世界では植物が生物界の頂点に君臨しているとか。

 そして人間は養分(精神エネルギー?)を吸い取られる対象であり、端的に言えば『餌』になっているそうです。

 

  このブログはオカルトブログなので、ネット掲示板の語り部たちが言うような『ヴォイニッチ解釈』を中心に降り下げていきたいと思いますが、もう1つ興味深い意見もあります。

 バーバリアン・イルミナティ〈注3〉の最高位にいた人物が、ヴォイニッチ手稿の秘密の1部を告白する記事があるのです。

 

 以下のサイトにその記事が掲載されていますが、その元になった英文はすでに見られなくなっているため、サイト内における翻訳の内容について言及したいと思います。

 

●カレイドスコープ

https://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-271.html

 

 その記事は、約6000人のイルミナティを束ねている12人の統治評議会メンバー(以下『最高位メンバー』と呼称します)の1人とインタビュアーの対話形式で進みます。

 

 このブログの『エプスタイン事件の考察 中編 4章』において、イルミナティは13名の魔術師から成る『グランド・ドルイド評議会』によって管理されている旨を書きました(イルミナティ離脱者を自称するジョン・トッドの発言より)。

 ジョン・トッドの発言より1人少ないですが、イルミナティの支配層は『13血流〈注4〉』と呼ばれる13の家系から構成されているそうなので、上記の最高位メンバーは『13番目』を意図的に隠したのかもしれません。

 あるいは『第13番目の聖なるダビデの血流〈注5〉 』は、陰謀論で噂されているだけで最初から存在しなかった可能性もあります。

 何にせよ、数が近いので『12人の統治評議会』と『グランド・ドルイド評議会』はほぼ同じ組織と考えてよさそうです。 

 

 この最高位メンバーはイルミナティの秘密の一端を語ったのですが、ヴォイニッチ手稿に関連することは以下の内容です。

 

●ヴォイニッチ手稿にはイルミナティの偉大な秘密が暗号で書かれている。

●ヴォイニッチ手稿を書いたのはイルミナティのメンバーであり、暗号の解読キーを示す前に殺害された。

 

 この他、『アーサー王伝説』にはイルミナティの本当の目的が隠されており、大衆の意識に刷り込ませてそれを明らかにしようと試みたそうです。ですが、イルミナティの敵によって『伝説の異本』が捏造され、本来のメッセージが混乱してしまったとか。

 

 アーサー王伝説と言えば、ケルト神話に深い関わりがあるといわれています。

 ということは、ヴォイニッチ手稿もまたケルト神話と何か関係があるのでしょうか。

 ケルトの宗教は自然崇拝が盛んであり、特定の植物は信仰の対象となっていました。

 ケルト人の間で使われたオガム文字には樹木の名前が付けられており、彼らの植物に対する思い入れを感じることができます(ただしオガム文字はヴォイニッチ手稿の文字とは似ていません)。

 

 最高位メンバーはアーサー王伝説に加えて、イルミナティの本当の目的を暗示した小説を出版したと語っており、それは以下となります。

 

●大金持ちの死亡クラブ(The Millionaires' Death Club)

●禁止A((Prohibition A)

●アルマゲドンの陰謀(The Armageddon Conspiracy)

●精神カメラ(The Soul Camera)

 

 見る目を持った人にしか、この4冊に書かれているイルミナティの秘密はわからないそうです。

 こうした書籍に隠された秘密が、全世界に一瞬にして明らかにされるようであれば、想像を絶するほどの危機になってしまうとも言っていました。

 

 ヴォイニッチ手稿に隠された秘密と、アーサー王伝説・紹介された小説に秘められた秘密が同じ内容かどうかは不明ですが、もし同じだとすれば、とても興味深いことです。

 特にアーサー王伝説は重要なヒントとなるでしょう。

 アーサー王伝説の元ネタの1つ――『植物崇拝が盛んだったケルト神話』と『謎の植物が数多く描かれたヴォイニッチ手稿』がリンクするからです。

 そういえば、最高位メンバーは『12人の統治評議会メンバー』と口にしましたが、『グランド・ドルイド評議会』とは言いませんでした。

 敢えて『ドルイド』の名称を伏せたとすれば、やはりケルト神話にヴォイニッチ手稿の秘密があり、同じくイルミナティの秘密にも繋がっていきそうです。

 そしてケルトのドルイドと言えば、人身御供の儀式を行っていたことでも知られています。

 ネット掲示板でヴォイニッチ手稿についての自説を展開していた人たちは、人間が植物の『餌』になっている旨のレスを残していきました。

 『ケルトの宗教』と『ヴォイニッチ手稿のネット掲示板説』――この2つには、「人間が上位存在の食料にされる」という部分において、恐ろしくも実に興味深い共通点が感じられます。

 

 次回以降はこの点について掘り下げていきたいと思います。

 執筆完了までお待ちを!  


【注釈 3~5】

 

■3 バーバリアン・イルミナティ
 バーバリアン・イルミナティとは公式のイルミナティのことであり、 欧州貴族の手足となって新世界秩序(ニューワールドオーダー)のために働いている『闇のイルミナティ』ではないとされる。
  ただし、イルミナティ離脱者だというジョン・トッドの話などを照らし合わせると、どちらのイルミナティにも怪しさを感じる。

 単純に同じ組織内の2大派閥が争っているだけで、両者は『同じ穴の狢』なのかもしれない。
 ジョン・トッドについては以下を参照

 ※〔エプスタイン事件の考察 中編 4章 ケルトの末裔

 

■4 イルミナティの13血流

 陰謀論で囁かれるイルミナティの支配層である。

 イルミナティは13の名家に支配されているといわれ、支配者たちの起源は古代または大洪水以前の『超古代』まで遡るという。

 これはアダム・ヴァイスハウプトが創設した歴史的な意味でのイルミナティと矛盾するが、前者の場合はその関連組織といわれる『フリーメイソン』との繋がりが深いと思われる。

 『イルミナティ 悪魔の13血流』の著者であるフリッツ・スプリングマイヤーによると、13家は以下の通りである。

 

 ①アスター家、②バンディ家、③コリンズ家、④デュボン家、⑤フリーマン家、⑥ケネディ家、

 ⑦李家、⑧オナシス家、⑨ロックフェラー家、⑩ロスチャイルド家、⑪ラッセル家、⑫ファン・ダイン家

 ⑬第13番目の聖なるダビデの血流

 

■5 第13番目の聖なるダビデの血流

 イルミナティの儀礼において、魔王ルシファーの直系とされる血流。

 言い換えるなら、イルミカード組織内における『神話的設定』のことであり、古代ギリシアの王たちが「我が王家の先祖は大神ゼウスである」などと主張したことと同類である(実際にルシファーの末裔かどうかなど確かめようがない)。

 なお、ルシファーという言葉は『旧約聖書 イザヤ書』のヘブライ語『הֵילֵל/ヘレル(明けの明星)』が初出である。

 ヘレルのラテン語が『Lūcifer/ルキフェルまたはルーキフェル』となり、スペイン語とポルトガル語での読みが『ルシフェル』、英語読みでは『ルシファー』となる。

 元々は新バビロニアの大王ネブカドネザル2世の比喩だったが、後に神に反逆した天使たちのリーダーとされた。

 ただし、ユダヤ教・キリスト教神話の元ネタになったより古い神話には、『反逆者としてのルシファー』のモデルになった神格が複数見られる。

参考・引用

■参考文献

●ヴォイニッチ手稿 完全図番版集

●ケルト神話  池上正太・丹野忍・シブヤユウジ・菅原健・鈴木康士・緑川美 著

●イルミナティ 悪魔の13血流 フリッツ・スプリングマイヤー 著 KKベストセラーズ

  

■参考サイト

●人間白書:http://unhp.blog.fc2.com/blog-category-15.html

●カレイドスコープ:https://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-271.html

※『人間白書』と『カレイドスコープ』は、ヴォイニッチ手稿を調べる上で大いに参考になりました。

 上記サイトの管理人に心から感謝致します。

 ●Wikipedia

●2ちゃんねる(現5ちゃんねる)

●永劫怪奇堂

●カラパイア

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