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氣功の基本――站椿功

氣功について

丹田

 人体にエネルギーセンターがあるという考え方は、ヨーガにおける『チャクラ』が有名ですが、氣功においてそれに当たるのが『丹田(たんでん)』です。

 仙道(仙人になるための修行法)から始まったとされる氣功では、上丹田・中丹田・下丹田という3つのエネルギーセンターが考えられています。

 丹田の概念は中国武術や空手などの格闘技とも関連があり、特に下丹田を意識するような訓練法が取り入れられています。

 

 なお、仙道は道教における修行法といわれることもありますが、仙道は宗教としての道教より先に始まっています。

 丹田がある各部位は以下の通り。

 

●上丹田 ⇒ 眉間

●中丹田 ⇒ 胸

●下丹田 ⇒ 下腹

 

●画像引用 氣功研究

 今回は、生体エネルギーの操作技術――『氣功/気功(きこう)』についての記事です。

 インターネットを検索すると、氣功の意味として『自己鍛錬法』や『民間療法』などが出てくることもありますが、氣功師の視点から言えば、おそらく冒頭のような内容が相応しいと思いました(ブログ主は氣功師ではありませんが)。

 

 氣功と聞いて、皆さんは何をイメージするでしょうか。

 ひと昔前は、触れずに人を吹き飛ばすようなパフォーマンスがありましたが、最近は余り見なくなりました。

 さすがに演技が過ぎるだろうと思われたためでしょうか。

 もっとも、こういうのは本来の氣功の使い方とは異なるようです。

 

 氣功という単語自体の歴史は古いものではありません。

 『Wikipedia(ウィペディア)』によると以下の説明があります。

 

 1957年に北戴河区の国営気功療養院院長だった劉貴珍氏が『気功療法実践』を著し、これが各国で翻訳されて『気功/氣功』という統一された名が世界的に定着した。

 

 この説明はおそらく正しいと思われますが、一方で『氣(気)』と呼ばれる概念は古くからありました。

 古代中国において、『氣』は陰陽五行思想に由来し、万物の根源となるエネルギーとされています。

 類似の概念は他宗教でもあり、インド(ヒンドゥー教ヨーガ)では『プラーナ』、チベット密教では『ルン(風)』と呼ばれました。

 こうしたエネルギーの人体でのポイントとして、氣功では『丹田(たんでん)』、ヨーガでは『チャクラ』があります〈注:左画像参照〉。

 文明の歴史を考えると、より古いインドの修行法(ヨーガの原型)にこうした概念の源流があるのかもしれません。

 

 元々は不老不死を目指した仙道(仙人になるための修行法=導引内丹術など)に由来した技法であるため、氣功も必然的に養生・医療が主要テーマとなっています。

 『氣』を武術(中国武術)に応用した『硬氣功(こうきこう)〈注1〉』という技術もありますが、こちらは空手の演武のように固い物を粉砕したり、あるいは逆に敵の攻撃に耐えたりすることを主要目的としています。

※実戦において、触れずに人を吹き飛ばすことなどは想定していないでしょう。

 

 そういう意味では、氣功はあくまで人体に流れるエネルギーを操作することで体を健康にしたり、あるいは強化したりする技術といえるでしょう。

 中国武術のみならず、フルコンタクト空手の猛者〈注2〉なども氣功の基礎トレーニングである『站椿功(たんとうこう)』を取り入れていました。

※站椿功は足腰を鍛えることに適しています。

 

 では、この站椿功について簡単に紹介したいと思います。


【注釈 1~2】

 

■注1 硬氣功(こうきこう)

 美容や病気の治癒も含めた健康面に関する気功を『軟気功(なんきこう)』、護身術など相手を倒したりするものを『硬気功(こうきこう)』と分類するのは日本独自の解釈らしい。

 中国において軟気功・硬気功ではなく、軟功と硬功と呼ばれ、軟功は体を柔軟に柔らかくすることを目的とした気功、硬功は体を強く固くすることを目的とした気功であり、それが日本で誤解されて伝わり広義の意味で用いられるようになったという。

 

■注2 フルコンタクト空手の猛者

 最初に『素手素足(グローブや防具を付けないこと)=直接打撃制』の組手を実践した『極真空手(国際空手道連盟極真会館)』――その旧城南支部では、立禅(站椿功)がトレーニングメニューとして組み込まれていたようである。

※旧城南支部は、緑健児氏や数見肇氏などの名選手(2人は空手の世界チャンピオン)を輩出したことで知られている。

 

 特に数見氏を特集した空手雑誌の記事では、立禅や『這(はい/中国武術である意拳の鍛錬法)』が紹介されていた。

三円式站椿功

三円

 上画像の3つの姿勢は、三円式站椿功における『3つの氣のボール』のイメージ図です。

 『氣のボール』でピンと来ない場合、恒星のような『光の球体』を抱えているイメージをするとよいかもしれません。

 

 右記の手順では、③が右図、④が中央図、⑤が左図に対応しています。

 

●画像引用 気功革命 秘伝奥義 集大成

立ち方と腕の角度

●画像引用 気功革命 秘伝奥義 集大成

 站椿功は、氣功・武術の各流派、あるいは鍛錬の目的などにより複数の種類がありますが、今回取り上げるのは『気功革命 秘伝奥義 集大成(盛鶴延 著)』に載っていた『三円式站椿功(さんえんしき・たんとうこう)』です。

 

 通常、站椿功では腹部の前に大きなボールを抱えた姿勢にとなりますが、三円式站椿功ではその名の通り3つの『氣』のボールを同時にイメージしながら実践することになります。

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■手順 

 

①両足は肩幅に開き、膝をやや曲げながら平行にして立つ。

 

②重心を落とす。

 背筋は真っ直ぐにして腕を脱力する。 

 

③腹部の前にて、『氣』のボールを両手で挟んで持つイメージをする⇒『一円』

 

④股関節から両膝の間に『氣』のボールを挟んでいるイメージをする⇒『二円』

 

⑤胸部と腕全体で『氣』のボールを抱えるイメージをする⇒『三円』

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■ポイント

 

●両手と下丹田(下腹部)の角度はなるべく正三角形となるよう心掛ける。

 

●手の各指は軽く開く。

 

●体全体を横から見た時、爪先と曲げた膝先と目の位置が一直線になるよう心掛ける。

 

●呼吸は自然呼吸。

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 上記の手順を端的に言うと、『両手』『股』『腕全体と胸』の各部位でボールを挟むイメージをするということです。

 ただ1つの『氣』のボールをイメ―ジするより内容が複雑になっています。

 

 厳密に言うと、站椿功の姿勢に入る前には準備動作をすることになっていますが、この記事では省きました。

 詳しく知りたい方は、『気功革命 秘伝奥義 集大成(盛鶴延 著)』をお求めください。

※ただし、値段はかなり張ります……(涙)


『氣』は実在するのか?

太極図

 『氣』の概念は単なるエネルギーに留まらず、古代中国の宇宙論とも関係しています。

 それが『陰陽思想(いんようしそう)』であり、その象徴となっているのが、画像の『太極図』です。

 陰陽想では、森羅万象は『陰の氣』と『陽の氣』より生まれ、生成消滅の変化が起こるとされています。

 

●画像引用 Wikipedia

五行図

 『五行思想(ごぎょうしそう)』は『陰陽思想』と同じく、古代中国の自然哲学思想です。

 万物は『火』『水』『木』『金』『土』の5種類の元素からなり、それぞれが互いに影響し合っていると説いています。

※『相生(そうしょう)』『相剋(そうこく)』など。

 

 『陰陽思想』と『五行思想』を合わせたのが『陰陽五行思想』であり、これが後に道教の源流の1つなりました。

 日本の『陰陽道(おんみょうどう)』では『陰陽五行思想』が思想的な基盤となっており、氣功も大元を辿れば、この陰陽五行思想及び神仙思想に辿り着きます。 

 

●画像引用 Wikipedia

 站椿功のように、特定のイメージを思い浮かべつつ、決まった姿勢を保ち続ける訓練自体はそれほど難しいわけではありません。

 

 ただ、一般人としては『氣』を感じ取ることができるのか――という疑問はあります。

 氣功の先生なら、それはできると言うでしょう。

 そしてブログ主も『それっぽいエネルギー』を感じ取ることはできると断言します。

※ブログ主は氣功師ではないのでこの表現で留めておきます。

 

 それは熱エネルギーのように感じ取れることもあれば、磁気や電気のような感覚をおぼえることもあるでしょう。

 昔からオカルト好き(また若い頃は格闘技好き)だったブログ主は、高校生の頃に氣功の基礎トレーニングを試しており、すでに慣れっこですが、最初に『氣』っぽいものを感じ始めた時はかなり興奮しました。

※だから他人より何かが優れているということは全くありません。

 

 『氣』の感覚を確信するには、一定時間の積み重ねが必要になると思われます。

 站椿功の実践時間として、最低でも5分、一般人なら15分までが目安とされています。 

 これはこれで1つの基準でしょうが、多くのオカルトトレーニングを試しているブログ主としては、こればかりをやっているわけにはいきません。

 何より仕事を優先しなきゃならんからです(笑)。

 

 ということで、現在のブログ主が站椿功系の訓練をする時は、『神道の呼吸法』の記事で紹介した『息長(おきなが)』という呼吸法を組み合わせています。

 息長とは鼻呼吸で40秒以上息を吐き続ける呼吸法です。

 站椿功の姿勢を保ちつつ(息長のような)長呼吸を実践すると、(ブログ主的には)体感的に『氣』のエネルギーを感じ易くなるため、効率がよくなるように思われたからです。

 これを毎日3回程度(計2分)繰り返すだけでも、(やらないよりは)壮健になった感はあります(もちろん個人差はあるでしょうが)。

 

 オカルトに限らず、全ての勉強や訓練は効率を考えなければ実生活の役には立ちにくいです。

 何が効果があって何が効果がないのか、より短時間で効果を出すにはどうすればよいのか――まるで神を冒涜するように『人間の都合』を頭に入れつつ、ブログ主は神秘主義というものを考えているのです(笑)。

※科学的に解明されていないので、このブログでは氣功も神秘主義(魔術)に分類しています。

 

 先述した通り、『氣』という概念は古代中国の陰陽五行思想ですでに説かれていましたが、このエネルギーが実在するかどうかについては議論があります、

 『氣』の感覚は単なる暗示効果に過ぎないと考える科学者もいるでしょうし、実際そういう要素はあるかもしれません。

 もちろん氣功の専門家からすれば反論はあるでしょうが、そもそも現時点の科学において証明不可能なことを議論したところで、一般人としては余り意味がありません。

 

 ブログ主はオカルトマニアなので、昔は(氣功を含めて)明確に神秘的と感じられる力にこだわっていましたが、現在はそうでもありません。

 神秘的感覚よりも『因果関係』――つまり「ある行為をすることで結果的に安定的・恒常的な利益がもたらされるかどうか」ということを重要視するようになったのです。

  

 紹介した站椿功の例で言えば、これを実践することで体力がつき、健康になったのであれば「(少なくとも)それは効果をもたらす訓練として正しい」ということになります。

 (中国拳法家ではない)格闘家の中で站椿功を実践する人がいるのも、『氣』がどうこういうより訓練法としての効果を実感しているからではないでしょうか。

 

 もし、この記事を読んで站椿功や氣功に興味をもたられた方がいるとしたら、そのことを踏まえていた上で取り組んだ方がよいかもしれませんね。

 

 より重要なのは、『神秘』ではなく『結果』なのですから。


参考・引用

■参考文献

●気功革命 秘伝奥義 集大成 盛鶴延 著 KuLaScrip

 

■参考サイト

●Wikipedia

●ニコニコ大百科

●ピクシブ百科事典

●コトバンク

●goo辞書

●IKKUSAN GUIDE

●第三文明

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